現在行われている高血圧の治療にもいろいろと問題点があります。
たった数回、ひどい場合は1回血圧が高かっただけで高血圧症と診断され薬を飲まされている人も少なくありません。血圧は1日のうちにかなり変動します。気温、ストレス、感情などによって血圧は刻一刻と変動するのが普通です。一時的に血圧が高くなることをあまり気にする必要はないと思います。
高血圧が持続すると、血管に負担がかかり、心臓、脳、腎臓の血管が障害をうけてこれらの臓器の機能が低下したり梗塞を起こしたりする危険性があるので、血圧コントロールを行うわけです。寝ているあいだは普通は血圧は下がります。しかし夜間就寝中に血圧が下がらない人や(non dipper)、逆に就寝中の方が血圧が上昇するような方は臓器障害の程度が強い場合が多いと言われています。また降圧剤内服中の方で、夜間就寝中に血圧が過度に低下しすぎている人(extreme dipper)もいますが、過度の降圧は、脳梗塞・心筋梗塞の発症を招きやすくする可能性もあります。
夜間就寝中の血圧は普通は測定できません。そこで重要なのが24時間血圧測定です。携帯型の血圧測定器を装着し、24時間自由行動下での血圧を測ると、日内変動が分かります。その結果で、血圧の薬の変更や中止する場合もあれば、逆に今まで血圧は問題ないと言われていた人が夜間就寝中に血圧が高かったことが判明して薬を飲むようになることもあります。
降圧治療が必要な方には薬を当然用います。しかし降圧剤には副作用もあります。長期間ACE阻害剤やARBなど薬剤を投与し、一旦低下していた血漿アルドステロン濃度が再び上昇し始める現象のことをAldosterone Breakthrough(アルドステロン・ブレークスルー)と言います。アルドステロン・ブレークスルーが起こる機序は、アンジオテンシンIIがACE以外の経路で産生されるためといわれています。また、アルドステロンは、主に副腎皮質球状層で産生されますが、病的心筋からも産生されることがわかっています。一般的にいわれているアルドステロン・ブレークスルーは、レニン↓、アルドステロン↑が見られることが多いのですが、近年、プロレニン受容体が発見され、レニン、プロレニンによる直接的なアルドステロン産生経路が分かっています(アンジオテンシンIIを介さない経路)。
この現象では、血漿アルドステロン濃度が上昇しても正常上限に留まることも多く、高血圧は起こしにくいものの、臓器障害は進展し易くなります。アルドステロンは、NADHオキシダ―ゼを発現させ、酸化ストレスを産生させます。よって、LDLの酸化を亢進させ、動脈硬化を進展させます。抗酸化アプローチが必要ですし、アルドステロン・ブレークスルーを起こさせないようなmildな降圧を考慮すべきと思います。レニン分泌刺激の原因は、交感神経緊張や腎血流の低下などですので、貧血がある場合は貧血を是正する必要があります。、極端な低フェリチン血症がある場合は、フェリチン値の改善によって血圧の安定が見られることも少なくありません。
分子整合栄養医学的には、軽度の高血圧の場合、ゴマやイワシに含まれるププタイドを用いて高血圧の治療を行います。ゴマやイワシの降圧ペプタイドは、厚生労働省から特定保健食品(トクホ)として認可されていますが、トクホには含有量の上限があるため、トクホ製品ではあまり降圧効果が期待できません。ゴマやイワシのペプタイドはマイルドな降圧作用のため、先述したようなアルドステロンブレークスルーを起こしません。
肥満も高血圧の一因になります。内臓脂肪が蓄積するとサイトカインによって血圧が上昇してきます。内臓脂肪を減らす適切な減量をすることで血圧が下がる場合も少なくありませんので、肥満がある場合はいきなり降圧剤内服を開始するのではなくまずは減量をすべきだと思います。