アトピー性皮膚炎はアレルギーが発症原因とは限らず、ビタミン・ミネラルの栄養素が不足して皮膚炎・湿疹を起こす場合が殆どです。特に乳児の湿疹は亜鉛欠乏や皮膚の小さい掻き傷に黄色ブドウ球菌が感染したことが原因です。このような栄養欠損や細菌感染が原因の皮膚炎に副腎皮質ホルモン(ステロイド)を長期連用するとことで、元来アトピーでない人がステロイドの副作用により本格的なアトピー性皮膚炎様の症状を呈するようになってしまうのです。
ステロイドを長期連用すると、皮膚萎縮と感染の誘発・増悪というステロイドの副作用により、皮内に細菌が感染して炎症を悪化させます。人間は本来自分の副腎でビタミンC・コレステロール・パントテン酸を材料としてステロイドホルモンを作ります。外部からステロイドを与えられると、副腎は自分でステロイドホルモンを作る必要がないと勘違いしステロイドホルモン産生能が低下してしまいます。ステロイド開始年齢が早く、長期連用しているほど産生能力が低下していると言われています。ステロイドを塗るのを急にやめると、自分の副腎でステロイドホルモンを十分産生できないので皮膚炎が急激に悪化してしまい、これをリバウンドと言います。リバウンドするとまたステロイドに頼らざるを得なくなり、まるで麻薬のようにステロイドを手放せなくなってしまうのです。
ステロイドの副作用などで皮膚のバリア機構が破綻しているアトピー患者さんの皮内には、黄色ブドウ球菌などの細菌感染が合併しており病態を悪化させていますので、除菌が非常に重要になってきます。強酸性水で1日に何度か皮膚を消毒すると、軽症の方はそれだけで治る人もいるくらいです。
またアトピーの方は、皮脂が少なく乾燥肌です。皮脂は外界からの異物の侵入を防ぎ水分などの体外喪失を防いでくれます。乾燥は痒みの原因になり、掻き傷から細菌感染が悪化するので、保湿をする必要があります。アミノ酸やCoQ10入りの化粧水などでしっかり保湿した後に、サンホワイトなどのワセリンで保護するのがいいでしょう。ただ、皮膚炎がひどい時には何にでもかぶれて赤み、痒みが生じることがあるのでそういう場合は何も塗らないほうがいいです。
アトピー性皮膚炎は、肘などの関節部位に鳥肌様の皮膚を呈することが多いですが、これは角化異常と言います。皮膚の細胞の分裂には亜鉛、分化にはビタミンAが必要なので、鳥肌様の皮膚を呈するアトピー患者さんは亜鉛、ビタミンAが不足していると言えます。 プロスタグランディンE1(PGE1)という生体調節ホルモンは、抗炎症作用を持ちアトピー改善に有効で、EPAやリノール酸・γ‐リノレン酸から変換されるので、これらを摂取することで症状改善に役立ちます。またリノール酸・γ‐リノレン酸がPGE1に変換されるには亜鉛・ビタミンB6・ビオチン・ビタミンC・ナイアシンなどが必要になりますので、これらの栄養素を補給することも治癒に役立ちます。
アレルゲン検査で陽性になった食品の制限ですが、検査で陽性になったからといってその物質が本当にアレルゲンとはかぎりません。皮膚もタン白質でできていますので、タン白質制限をすると丈夫な皮膚が作れずアトピー性皮膚炎の病態改善にとってもマイナスになります。実際に食べて呼吸困難を起こす食べ物は制限すべきですが、食べてもどうもない食品は制限しないほうがいいのです。ステロイドから離脱し根本的にアトピーを治したい方には、栄養療法と皮膚の消毒・保湿をお勧めします。
先述しましたが、アトピーの方は副腎皮質機能が低下している場合が多いです。副腎皮質機能を見る検査としてはDHEA-Sとい項目があります。DHEA-Sの値が低い場合は、DHEAの補充をすることで副腎機能が改善します。また副腎はビタミンCを高濃度に含有する臓器ですが、高濃度ビタミンc点滴を行うことも副腎機能の改善に役立ちます。高濃度ビタミンcには、抗炎症作用、抗菌抗ウイルス作用もありますので、その点からもアトピー性皮膚炎の治療に非常に有効です。