マラソン、競輪、サッカー、水泳、野球、格闘技などのスポーツは激しい有酸素運動を行ったり瞬発力を必要としたりしますので、これらの競技をするアスリートは細胞分子レベルでの栄養状態を高めておかないと第一線で活躍できません。
また正しい栄養アプローチをしないと、好成績を出す前にケガをしやすい体になってしまいますし、現役を引退したあとに栄養欠損の影響がでてくることが多いので、引退後のことも見据えた栄養対策は非常に重要です。特に女性の場合は、現役時代の栄養摂取が不十分だと不妊、骨粗しょう症などの問題がしばしば見られます。
ミトコンドリアというエネルギー産生工場には鉄が必要ですし、筋肉内で酸素の運搬と貯蔵の働きをしているミオグロビンにも鉄が必要ですので、鉄不足のアスリートは不利な状態にあると言えます。マラソンなどは足底が地面からの衝撃を受けるため、溶血が起き貧血になりやすくなりますし、発汗によっても大量の鉄やカルシウムなどのミネラルを失います。特に女性のアスリートは月経により鉄を喪失するので、ヘム鉄の補給は必須です。オリンピックのマラソンのメダリストに鉄不足対策について聞いたことがありますが、「貧血が強い場合は鉄剤の注射をしてもらう選手もいる」とのことでした。鉄の静脈注射は、大量の活性酸素を発生させる危険な治療なので、出血などして著明な貧血になっているような緊急時以外はしないほうがいい治療だと考えます。
エネルギー産生工場であるミトコンドリアは常に酸化ストレスにさらされていますので、CoQ10・ビタミンC・Eなどの抗酸化物質が必要です。細胞膜、筋膜も活性酸素の影響を受けやすく、膜の酸化を放置したままでは、ケガのリスクが高まります。膜の成分は主に脂質なので、天然のトコトリエノール・トコフェロールやCoQ10の摂取が重要になってきます。スポーツ選手は、プロテイン・BCAAなどの摂取やウエイトトレーニングで筋肉の強化を図っていますが、筋肉を支える腱や靭帯はウエイトトレーニングで鍛えることができません。筋肉ばかり鍛えると、その肥大した筋肉の仕事をささえきれなくなり腱や靭帯を損傷していまいます。腱や靭帯は栄養アプローチで強化するしかないのです。不足栄養素の補充や抗酸化アプローチをすることで、身体能力の向上はもちろんのことケガをしにくい体造りが可能になります。