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かなり前のことですが、小学校高学年の頃から朝起きられない、頭が痛い、収縮期血圧が70mmHgくらいと低血圧、という状態になり登校できなくなった男子児童がgdmクリニックを受診されました。既に大きな病院を受診しており、起立性調節障害と診断され、昇圧剤を処方されるも改善がないため、栄養療法に望みを託されて転院されたそうです。1年間に10㎝以上も背が伸びておりまさに成長期まっただ中の状態でした。血液検査ではヘモグロビンは基準範囲内にあるもののフェリチンが低く鉄不足状態でした。ヘム鉄を1日に48~72㎎とかなりの量を摂ってもらいましたが、成長に利用されるためかフェリチンの増加も少しずつでしたので症状も劇的には改善しませんでした。しかし、以前よりも朝起きられる頻度が増えたり、たまに午後から学校に行けるようになったりしたため、親御さんも栄養療法に手ごたえを感じられ、諦めずに通院を続けられました。中学2年生になると月に数回くらいしか休まなくなり、身長の伸びがほぼ止まった中学3年生になるとほぼ休むことなく通学できるようになりました。
ヘム鉄を摂取しても鉄の貯金が増えないと起立性調節障害の症状は改善しません。成長期には栄養の需要が亢進していますし、消化吸収能力が低い人はヘム鉄をたっぷり摂ってもなかなかフェリチンは増えてくれません。フェリチンが増えるまで摂取量を増やさないといけません。男子の場合は、背が伸びるのが止まれば徐々に鉄の貯金が増えてきて元気になりますが、女子の場合は生理が始まるので食事だけではなかなか鉄の貯金は増えないので注意が必要です。
起立性調節障害は適切な栄養アプローチをすれば必ずよくなります。ただ鉄は吸収されにくい栄養素なのでなかなか思うようにフェリチンが増えてくれません。ですから1~2か月くらいではよくならないことも珍しくありません。すぐに効果が出ないと治療を諦める親御さんもいますが、先ほど書いた患者さんの治療経験を通じて諦めずにとにかくフェリチンが増えるまで治療を続けることが重要だと痛感した次第であります。