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胃癌・大腸癌・肺癌・乳癌などの固形癌になった場合、外科的切除がまず必要になります。術後は、進行の程度によって抗がん剤や放射線治療が追加になります。麻酔や手術は身体にとって非常にストレスになるため、体タン白の異化亢進がおきアルブミンというタン白質が大幅に低下します。赤血球、免疫細胞、抗体、補体などは腫瘍免疫において非常に重要な成分ですが、これらの主な材料はタン白質です。手術操作による出血と侵襲による体タン白の異化亢進で低タン白質のなるために貧血も進みます。このような機序で癌患者さんは、術後には低アルブミンと貧血になるので、外科医は貧血、低アルブミンになって当たり前と思い気にも留めません。外科医や腫瘍内科医は、抗がん剤の知識は豊富ですが、貧血と低アルブミンが癌治療においていかに不利になるか知りません。私は消化管内科で研修をしていたのであまり抗がん剤治療をすることはありませんでしたが、呼吸器内科の指導医のもと肺癌患者さんの抗がん剤治療を担当することも時にありました。指導医から、抗がん剤による骨髄抑制で起きる白血球減少に注意しなさいと言われましたが、貧血と低アルブミンが起きていないか、おきていたらこれらを是正しないといけない、と教えられたことはありませんでした。
栄養状態の重要性を知ったのは分子整合栄養医学を学んでからです。抗がん剤はアルブミンに結合して全身に運ばれますので低アルブミンだと抗がん剤が治療効果を発揮できないだけでなく副作用が起きやすくなります。マクロファージ、NK細胞、T細胞などの免疫細胞もタン白質が材料として欠かせないので低栄養状態だとこれらの産生が低下します。これらの細胞性免疫の活性化に補体が深く関与していますが、補体もタン白質から成ります。また、赤血球は膜表面上に補体レセプターというものを持っており、補体が捕まえた癌細胞を捕捉し肝臓で癌細胞はマクロファージに貪食されますので、貧血も癌と闘うにあたって不利になります。
しかし、保険診療において、癌患者さんの栄養状態を是正する治療方法はありません。ビタミンA、ビタミンB群、プロテイン、BCAAなどの栄養素の摂取が欠かせません。栄養状態の是正をご希望の方は是非分子整合栄養医にご相談ください。