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えせ栄養療法

県外の大学に通っていた方が体調を崩し岡山に戻ってこられ、当院を受診されました。県外でも栄養療法を受けていたというので、どういった治療をしていたのか尋ねるとフェロミアとプロマックを処方されていたとのこと。フェロミアは保険の鉄剤(無機鉄)です。プロマックは保険の胃薬ですが亜鉛を含んでいるので亜鉛補充目的で使われることがあります。よくユベラという保険の合成ビタミンEが処方されていますが、天然のビタミンEとは体内動態が違いますし、抗酸化作用はありません。しかし、保険の薬を使った治療は本当の栄養療法ではありません。栄養療法はドーズレスポンスといって容量依存性に治療効果を発揮します。不足を補うだけの量を摂取しないといけません。保険の薬には用量が決まっているので不足が目立つからと言って多く処方することはできません。また合成のビタミン剤(ビタミンAやE)は、細胞構成する分子ではありませんので天然のビタミンのような働きはしません。保険の鉄剤は無機鉄なので活性酸素を発生させて胃腸の粘膜を傷害します。本当の栄養療法では活性酸素を発生させない吸収率のよいヘム鉄を用います。
保険の薬を使うと患者さんの費用負担は少なくてすみます。私も20年前に栄養療法を始めた時は、保険診療代に比べてサプリメントの費用がかなり高いので患者さんの懐具合を心配しながらおっかなびっくり処方していました。しかし、量を確保しないと治療効果がでないことを体感、また治らないと意味がないことを痛感した今では至適量を処方できるようになりました。それでも師匠の処方量に比べると少ないですが。