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鉄剤の注射が必要です?

循環器疾患で他院にて治療中の患者さんが「貧血があります。次回も改善していなければ鉄剤の注射をしましょう」と主治医に言われたがどうしたものかと相談に来られました。血液データを見るとヘモグロビンが10台とやや貧血がありましたが、フェリチンはおろか血清鉄さえも測定していません。MCV(平均赤血球容積)を見ると100弱と大球性でした。鉄欠乏性貧血の場合、MCVが小さくなるのが通常ですので、鉄欠乏が貧血の原因ではなさそうです。
貧血=鉄欠乏と考えるのはかなりの勉強不足です。貧血にも色々な原因があるので、原因に応じた治療をする必要があります。血液を造るには鉄だけでなくタン白質、ビタミンB群、亜鉛などの栄養素も必要です。この方はアルブミンが3g/dlちょっとしかなかったです。フェリチンを測定していないのでなんとも言えませんが、恐らくこの方はタン白質やビタミンB不足による貧血だと思われます。
鉄剤の注射で大量の無機鉄が血管内に入っていきます。トランスフェリンというタン白質の一種と鉄は結合すると安定化し造血に利用されますが、注射だとトランスフェリンと結合できないフリーの鉄が大量に血管内に溢れてしまい、活性酸素を発生させてしまうのです。大出血で貧血になったが輸血ができない、といった緊急の時以外の鉄剤注射は避けた方がいいと考えています。