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学校に行きたくても、朝起きられない、身体が思うように動かない、という小学生~中学生の子供さんが少なくありません。血液検査、脳のMRI、脳波などの検査をしても「異常なし」と言われる場合が殆どです。大学病院などに紹介され、血圧が低いので「起立性調節障害」や「起立性低血圧」という診断をされ血圧を上げる薬をだされている人も多いですが、薬を飲んでも症状はいっこうに改善しません。場合によっては、身体には異常がないから心療内科を受診するよう言われ、そこで抗うつ剤を処方されているケースもあります。
朝起きられない原因として圧倒的に頻度が高いのが鉄欠乏です。鉄はエネルギーを産生するミトコンドリアに必要だからです。なぜ鉄欠乏になるかと言うと、思春期には骨が伸び体格が大きくなります。骨が伸びるのに鉄が欠かせませんし、体格が大きくなると当然循環血液量も増えないといけないので造血に鉄が必要になります。女子の場合、身長の伸びが止まっても今度は生理が始まりますので、さらに鉄欠乏が進みます。男子の場合、身長の伸びが止まれば鉄の需要も落ち着いてきて徐々に鉄の貯金が増え元気になっていくことが多いです。自分の子供も幼稚園や小学低学年の頃、なかなか朝起きないので血液検査をしてみたら、ヘモグロビン・フェリチンが低く鉄欠乏性貧血でした。小児の場合あまり採血をしないのと、フェリチンまで測定することがあまりないの小児に鉄欠乏が多いということが知られていないだけで、実際検査してみると殆どの子が貧血もしくは低フェリチンだと思います。我が家は肉食一家で肉をよく食べても鉄欠乏性貧血だったということは、肉をあまり食べない家の子はもっと鉄欠乏なのだろうなと思います。なぜなら、野菜に含まれている鉄は非ヘム鉄なので殆ど吸収されないからです。肉、魚、レバーなどの動物性の鉄が吸収率がよくフェリチンが増えやすいです。
2番目に多い朝起きられない原因としては「機能性低血糖症」です。あまり知られていない病名ですが、パンや麺類、砂糖の入ったジュースやお菓子の摂りすぎると、血糖が急激に上昇しそれに反応して膵臓からインスリンが過剰に分泌され、最終的に血糖が下がる病態です。脳のエネルギー源は主にブドウ糖なので、低血糖になると脳がうまく働かなくなります。身体を動かすエネルギーも不足します。朝低血糖になっていると、なかなか起きられません。血糖が下がると脳の維持ができなくなるので、人間は副腎からアドレナリンやノルアドレナリンなどの血糖を上げるホルモンを分泌させて血糖を維持しようとします。アドレナリンなどのホルモンは交感神経を緊張させる働きもあるので、頻回に低血糖→アドレナリン・ノルアドレナリン分泌を繰り返すと、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ(自律神経の乱れ)が生じてきてさらに体調を崩してしまいます。低血糖症の治療方法は、糖(チョコやジュース)を絶ち、炭水化物も白米を1膳食べるくらいにとどめ、タン白質中心の食事にすることです。
起立性調節障害や起立性低血圧を診断されて治療を受けるも改善しない、朝起きられない、といったことでお困りのお子さんは、鉄欠乏や低血糖かもしれません。ただ、鉄欠乏や低血糖の診断は一般的な病院ではできませんので(基準値によるマニュアル診断のため)分子整合医にご相談ください。