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先日、米国のジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが、腸の悪玉菌(毒素産生バクテロイデスフラジリス菌:ETBF菌)をマウスの腸や乳管に移植すると、乳がん細胞の増殖と転移が促進されることを発見したと発表したそうです。
乳がんの発症には家族歴、遺伝子変異、放射線照射、肥満などの要因が知られていますが、これらにいずれにも該当しない女性が乳がんを発症しています。以前は、乳房組織は無菌と考えられていましたが、最近では乳房にも微生物が存在することが明らかになりましたが、乳房の微生物がどのような影響をもたらすかは不明でした。そこで、研究チームは、乳がんの既往のある人および乳がんに罹患していない人の乳頭分泌液の微生物を分析した結果、すべての乳房組織サンプルからバクテロイデスフラジリス菌が検出されたそうです。続いて、ETBF菌をマウスに経口投与したところ、その菌がマウスの腸に定着し、マウスの乳房で乳がんの前段階である乳管の過形成が認められたそうです。また、マウスの乳頭にETBF菌を注射したところ、同様に乳管の過形成が認められたとのこと。ETBF菌の毒素の曝された乳房組織は、曝されていない乳房組織に比べて休息な腫瘍性増殖を示し、悪性度の強い腫瘍を形成したそうです。さらに、ETBF菌の毒素にさらされた乳房細胞は、がんの発生、転移が起きる可能性があることも判明。以上より、乳がんの発生にETBF菌が関与する可能性あることや、腸内細菌叢の乱れや発がん機能を備えた毒素産生悪玉菌が棲息している場合、乳がん発症のリスク因子となる可能性が考えられるとのことです。胃がんの発症にピロリ菌が関与していることが30年ほど前に考えられるようになりましたが、何年か後には乳がんだけでなく様々ながんの発症に細菌やウイルスなどの微生物が関与していることは判明してくるかもしれません。
腸粘膜の健全化、腸内細菌叢を整えることが様々な病気の予防につながることは間違いなさそうです。