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キレート鉄で鉄過剰の危険性

疲労感で以前受診した中学生の患者さんが久しぶりに来院されました。フェリチンを測定すると200ng/mlを超えていました。お母さんによく聞くと、キレート鉄を買って飲んでいるとのこと。「うつ消し〇〇」を書いている心療内科医がキレート鉄を推奨しており、この患者さん以外にもキレート鉄を飲んでいた人が何名かおられました。
キレート鉄は安価なのはいいですが、様々なデメリットがあります。腸内細菌の中には鉄を利用して増殖するものがあり、悪玉菌が増殖した場合、不快な胃腸症状や下痢を引き起こすことがあります。鉄の吸収経路は2つあり、ヘム鉄はヘム鉄専用の入り口がありますが、キレート鉄や保険の鉄剤は別の入り口から吸収されます。この入り口からは、亜鉛や銅などの他のミネラルも吸収されますので、キレート鉄を摂取すると銅や亜鉛の吸収が阻害されます。ヘム鉄は、独自の入り口から吸収されますので、ヘム鉄を多く摂取しても銅や亜鉛の吸収の邪魔をしません。
キレート鉄を摂取する場合は、摂り過ぎて過剰症にならないようにしないければいけません。また、亜鉛や銅が不足しないよう配慮する必要があります。コストは高くなりますが、ヘム鉄での摂取が安全です。