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20年前に比べて熱中症になる人が急増しています。確かに気温が高くはなっていますが、他の国ではもっと暑いところもありますので、気温だけの問題でもなさそうです。熱中症は、細胞のミトコンドリアでATPというエネルギー産生がうまくできなくなって細胞が機能しなくなることが原因だと考えています。ちょっと調べてみると、熱中症が重篤化しやすい遺伝子をもつ人がいるそうです。 ATPは、3大栄養素である糖質、タンパク質、脂質から産生されます。脂肪は脂肪酸に変換されてATPを産生するクエン酸サイクルに利用されますが、この脂肪酸をミトコンドリアに取り入れる役割を担うのが CPTⅡという酵素です。このCPTⅡが遺伝子のタイプによっては、体温40℃以上でその機能が低下する熱不安定型のたんぱく質となることを、徳島大学・疾患酵素学研究センターの木戸博教授らの研究グループが見出しています。
ATPは脂肪酸だけから作られるわけではないので、糖質やタンパク質からの産生が維持されたら熱中症にはなりにくいはずです。ATPを産生するミトコンドリアという細胞内小器官の維持には鉄が欠かせません。成長期の子どもや月経のある女性の多くは鉄欠乏状態です。また、クエン酸サイクルがスムースに回転するためには、CoQ10やビタミンB群が欠かせません。CoQ10は肝臓で合成されますが加齢とともに合成量が低下します。また、スタチン系のコレステロール降下剤を内服している人はコレステロールとともにCoQ10の合成も阻害してしまいます。
このように細胞レベルでの代謝を考えると、熱中症対策は、水分をただ補給するだけ、冷房をつけるだけでは不十分なのです。すべての人に言えることはビタミンB群の補給をすることです。また、鉄が不足している場合はヘム鉄の補給、高齢者やスタチン内服している人はCoQ10の補給をすることが重要になってきます。