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糖尿病の持病がある患者さんが、感染症などで入院すると血糖が普段より高くなることがよくあります。そのような状態を「sick day(病気の日)」といいます。sick dayは、肺炎などの感染症のほか、外傷や骨折なども該当します。このような病気や怪我は身体にとってストレスとなるので、アドレナリンや副腎皮質ホルモンなどの抗ストレスホルモンが分泌されます。抗ストレスホルモンは急性期における体の防御に役立つ面がある一方で、高血糖を引き起こします。糖尿病でなければ血糖上昇に応じてインスリン分泌が増えるものの、糖尿病の患者さんではそれが十分にできません。このためsick dayには血糖値がいつもよりも高くなります。こんなことは常識のはずなのに、病院の医師はすぐインシュリンで血糖を厳格にコントロールしたがります。そして、退院後もインシュリン注射が必要ですと患者さんに言います。
状態の落ち着いた外来患者さんを平素診ているかかりつけ医としては、sick dayで一時的に血糖が上がっているだけなのになぜそんなにインシュリンを打ちたがるのか不思議でしょうがありません。退院後もインシュリン注射をすることは患者さんにとって負担になりますし、低血糖になる危険性もあります。感染症などのsick dayが落ち着いたら血糖値はまた安定化してきますので、インシュリン注射をする必要はなく、経口治療薬で十分対応可能です。インシュリン注射をすると低血糖をよくなります。低血糖状態になると交感神経が緊張し血小板凝集が起きて血栓症ができやすくなります。HbA1cさえ低くコントロールすれば合併症を防げると思っている人が多いですが、そんな単純なものではありません。低血糖にならないようなマイルドな血糖コントロール及び、活性酸素から血管を守るための抗酸化アプローチ(ビタミンEなどの摂取、血糖値が高いとAGEsでき活性酸素を発生し血管を傷つけます)が合併症予防には欠かせません。